国語科 6年実践例 |
万葉集「東の 野に炎の立つ見えて かへり見すれば 月傾きぬ」 柿本朝臣人麿 作
この和歌は、文武天皇がまだ軽皇子といわれていたころ、父の草壁皇子のご逝去ののち、大和の阿騎野に遊猟され、生前ここで狩猟された父を偲びながらこの野に宿られたときの皇子の心を汲んでお供に従った柿本人麻呂が詠んだものです。
この和歌が6年生の国語の教科書に掲載されていたことがありました。
和歌の口語訳が教科書に記してあったそうです。6年担任のK先生は、「こんなすばらしい和歌を読んでお終いにするのはもったいない。この和歌に詠まれた情景を絵に描き表してみよう。」と子どもたちに提案されたそうです。
子ども達は、「東の 野に炎の立つ見えて」から東の方の情景を山の端から今まさに陽が昇ろうとしている情景に落ち着いたそうです。
西の空の情景については、「かへり見すれば 月傾きぬ」を手がかりにそれぞれ、月が西の空に沈もうとしている絵になったそうです。
ところがその月たるや、三日月がある、上弦の月がある、下弦の月がある、満月がある、それぞれが自分の思いを話し、なかなかまとまらなかったそうです。
子どもたちがいろいろ議論してもなかなか一つにまとめることができなく、時間がなくなったところで、
一人の子が、「この月と太陽の関係は4年生か5年生の理科で習ったような気がする。明日4年生と5年生の理科の教科書を持って来て調べてみよう。」と提案したそうです。
翌日、持ち寄った教科書をもとにいろいろ調べていると、東の空に太陽が出始める時間に西の空に浮かぶ月は満月しかないという結論に達したということです。
ある子は、与謝蕪村の俳句
菜の花や 月は東に 日は西に
と対比して、太陽と月の関係を話したそうです。
ある子は、「きれい」とつぶやいたそうです。
国語の和歌の学習での、歴史を学び、理科の復習をし、絵に表す、まさに知の総合科です。
過去の学習経験を本時の学習に生かすことは、生涯学習の大きな視点です。
学ぶべきところがあります。